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開発ストーリー 雪ん娘(ゆきんこ)DEVELOPMENT STORY

【第一章】山形に400年続く伝統野菜

昭和59年「りんご茄子」発売

山形県鶴岡市一霞地区に400年前から伝わる伝統の在来野菜「あつみかぶ」は、山の急斜面を焼いて種を蒔く原始的な焼畑農法で栽培され、受け継がれてきた。江戸時代、徳川幕府に献上されたとも言い伝えられている。この「あつみかぶ」は土壌によって味や色づきが微妙に変化する繊細な野菜だ。表皮は濃い紫色で中は真っ白。酢で漬けることで鮮やかなピンク色に自然発色し、口当たりのよい甘酢漬にして親しまれている。

「あつみかぶ」を原料にしたマルハチの「雪ん娘」は開発から多くのエピソードを秘めている。あつみかぶとの出会い、返品の山、自然色へのこだわり、奇跡の復活、新世代の浅漬けへのスタートなどである。

【第二章】新商品は「他社が作れないものづくり」、「健康」

昭和52年9月、二代目社長・阿部武廣(享年55歳)の突然の死去にマルハチが揺れた。主力商品のたくあんの価格競争が厳しさを増し、経営は2年連続赤字となる危機真っただ中での出来事だった。三代目社長・阿部武敏(当時28歳)が率いる経営陣は考えた。 「他のメーカーが簡単に作れる商品を作っていては駄目だ。マルハチにしか作れない、他社が真似のできないものづくりをしていかなければ、たくあんと同じ運命を辿ってしまう」。新商品開発の基本テーマとして「他社が作れないものづくり」、そして食品だからこそ不可欠な「健康」が掲げられた。

【第三章】「あつみかぶ」との出会い

あつみかぶとの出会い

新社長となった阿部武敏は、前社長が急逝したショックから顔色の冴えない日々が続いていた。それでも毎日仕事は続けなければならない。昭和52年10月のこと、大根栽培の直営農場へ生育状況を見に出かけた。その帰り道、道端でふと赤いかぶが目に入った。それが「あつみかぶ」だった。この辺りでは別段めずらしいことでもなく、いつもなら気に留めずに通り過ぎるのだが、その時だけはなぜか「あつみかぶ」が鮮烈に目に映った。いつもと違う空白の心理状態であったからかもしれない。「これで新商品を作ってみよう!」こうしてあつみかぶを持って会社に帰ったのが、「雪ん娘」開発の出発点となった。

【第四章】新商品「雪ん娘」の誕生

雪ん娘誕生

マルハチ研究室では、早速「あつみかぶ」の商品開発に取りかかった。実際に漬け込んでみると、着色料を一切使うことなく酢で漬け込むことでピンク色に自然と色づくことがわかった。昭和50年代当時は、漬物に合成保存料や合成着色料を使用するのが一般的だった。その中で合成着色料を使わない、自然色で漬け上がる「あつみかぶ」という素材に大きな可能性を感じた。試作をくり返し、きれいなピンク色の「雪ん娘」が誕生した。

昭和52年11月、社長の阿部武敏は翌年の全国新発売に向けて完成した「雪ん娘」を手に、北海道から神戸まで得意先を回った。「ピンク色がきれいだ」、「見たこともなく珍しい」とどこに行っても大好評だった。これは大ヒットになる!たしかな手応えを感じ大いに期待を膨らませた。

【第五章】ついに全国新発売

翌昭和53年11月、マルハチの期待を一身に背負って初出荷の時を迎えた。大量の注文を抱え順調にスタートした。しかし、1週間経ち2週間経つと注文は激減、ほとんど注文が来なくなってしまった。そして、1ヶ月後からは返品が届くようになってしまったのだ。起死回生をかけて発売した「雪ん娘」は返品の山となり、赤字の会社に追い討ちをかけるようにズシッと重くのしかかった。発売1年前、社長がお客様からいただいた評価は非常に高かった。しかし、よくよく考えてみると「ピンク色がきれいだ」「見たこともなく珍しい」というだけで「売れる!」とは誰一人言っていない。売り場に行って目にしたのは、手には取るが買い物かごに入れずに元へ戻すお客様の姿。ショッキングな光景だった。きれいなピンク色は白かぶに「合成着色料で着色」した漬物と思われたのかもしれない。

しかし、社長はあきらめなかった。合成保存料も合成着色料も使ってない本物の「自然食品」だ、とゆるぎない信念があった。この「雪ん娘」は絶対に売れる!と信じ切っていた。スーパーの店頭での発色実演や試食、業界新聞を通して「雪ん娘」が自然食品であることを徹底して広めた。そして、幸いなことに昭和55年頃から追い風も吹き始めた。合成保存料、合成着色料、合成甘味料は使わないという食品への安全意識が社会現象になり始めたのだ。「雪ん娘」にとって最大のチャンスとなった。

昭和55年秋、発売から3年を経てついに「雪ん娘」が全国的な大ヒットとなった。そして漬物業界では「雪ん娘神話」も生まれていた。数年後、「雪ん娘」の大ヒットでマルハチは倒産の危機から奇跡の大復活を遂げた。「雪ん娘」はまさにマルハチの救世主となった。

【第六章】皆さまに愛される「雪ん娘」に

愛される雪ん娘

商品名の「雪ん娘」は、ふるさと山形の白い雪の中、可憐に映える少女のほっぺをイメージして名付けられ、「皆さまからいつまでも愛されますように」という願いが込められている。

その願いのとおり発売から40年経った今でも、ロングセラー商品としてマルハチを支え続けている。自然色、鮮やかな色合い、素材のおいしさを生かし、これから50年、100年と愛される「雪ん娘」をお届けしたい。

開発ストーリー

「あきらめない」「寝ても覚めてもの熱い思い」
それこそが私たちマルハチです。